(やしゅうし)
野の草花を摘み集め、そのまま和紙にすくことからこの名前がつきました。
2代目・遠見 京美(とおみ きょうみ)が大成させた和紙です。
色の鮮やかさや、草花の生き生きとした表情は他のそれと一線を画します。
なるべく手を加えず、植物をそのまま、水の流れるままにすく。
だからこそ現れる姿は先代がつくりあげた杉皮紙と同じく、大地に似た大らかな表情をしています。
京美は17歳で遠見家に嫁ぎ、すぐに義父である周作の紙すきを手伝い始めます。
当時は紙すきという言葉も知らなかったと言います。それでも、今まで嫌だと思ったことはなく、自然とあそぶように和紙づくりに携わってきました。
この野集紙は1988年につくられました。
周作が亡くなり、なんとか能登仁行和紙を続けていくんだと必死だった頃。
長年共に作業した中で感じた周作の姿勢や考えを大切に受け継ぎながら、
まわりの溢れんばかりの自然を活かして野集紙をつくり上げました。
野集紙は、工房のまわりに咲いている野の草花を摘むことから始まります。
山深い土地は豊かで、さまざまな植物が季節ごとに顔を出します。
色とりどりの草花が集まったところで紙すきに入ります。
雁皮(がんぴ)紙をすくい上げ、その枠の中に摘んだ草花をぱらぱらと放ちます。
その後、もう一度雁皮紙をくみ上げ、水の流れにまかせてゆらゆら漉いて出来上がります。
つくる というよりも 自然にまかせる スタイルは簡単そうでとても難しいものです。同じ草花で、同じように漉こうと思ってもどこか違います。
美しさや可憐さ、いきいきした表情、空気感。
京美の感性が活きた作品だからこそ、人々を感動させ新たなファンを増やしました。
野集紙は能登仁行和紙を体現する和紙のひとつです。
能登仁行和紙
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