(すぎかわし)
名前の通り、杉の皮からつくった和紙です。
厚手で素朴な風合いの杉皮紙は
初代・遠見周作(とおみ しゅうさく)が創案し、形にしました。
元々紙すきのなかった地で和紙をつくることになったのは
周作が戦時中、旧満州で竹の紙すきをみたことがきっかけです。
野生の楮がまわりの山で手に入り、素人でも簡単にできそうに見えたこと、
また工房がある輪島は漆器の産地で、包み紙として和紙の需要があったことから
周作は戦後の昭和24年頃から和紙づくりを始めます。
やがて楮が手に入らなくなり、困っていたときにある光景に出会います。
製材所で踏まれるがままに捨て置かれた杉の皮。
雨に打たれて、しっとりと黄金色に映える樹皮の美しさに感動し、
周作は杉皮で和紙をつくろうと動き出します。昭和34年のことです。
身近な素材である杉皮。その中に宿る、強烈な自然の美しさ。
周作の心を捉えた光景はずっと創作の原点にありました。
粗く太い杉皮の繊維は扱いにくく、完成には試行錯誤が続きました。
杉皮よりもやわらかい能登ヒバの繊維を混ぜるなど工夫を重ねた末、やっとの思いで杉皮紙は出来上がりました。
原料となる杉皮は地元の製材所から分けてもらいます。
杉皮は小さく割り、大釜に入れて強火で丸一日煮ます。
その後、杉皮を釜から上げてよく水洗いし、しっかりアクを抜きます。
ここからビーターと呼ばれる機械で繊維を細かくし紙の素が出来上がります。
杉皮紙は元々こげ茶色をしています。杉皮そのものの色です。
そこから色を抜いたり、白の原料と混ぜ合わせることで5色のグラデーションをつくっています。
No.1は一番色の濃い、こげ茶色の和紙。
杉皮ほぼ100%のこの紙はつくるのが難しい和紙です。
原料を水にとかすと水の色は茶色ではなく真っ黒に見えます。
そのため漉くときに紙の厚みが分かりにくく、杉皮のかけらが入ってしまっても見つけにくいという難点があります。
また、乾かすときにも繊維が短い杉皮紙は破れないように注意が必要です。
一番繊細さが必要な和紙かもしれません。
天然の美しいこげ茶色の和紙はものを引き立たせる背景として、表装などに使わています。
No.2、No.3はこげ茶色の原料からそれぞれの色になるまで漂白し、パルプと少しの楮を混ぜ合わせてつくります。
どちらも紙なのに木の温もりを感じるようなあたたかな印象があります。
壁紙やふすま紙として、建築の内装に用いられています。
No.4はパルプにNo.1の原料を、No.5はパルプにNo.2とNo.3の原料を適量入れてつくります。
原料の配合がNo.1~No.3は杉皮ベースなのに対し、No.4・No.5はパルプがベース。
そのためNo.4とNo.5は質感や、色味が異なります。
白地に杉皮の繊維がゆれるように入っていて、和紙を見ると杉の繊維の短さがわかります。
色はうすい小豆色とベージュ色。風合いもふわっとしたやわらかい感触です。
用途は広く、壁紙、ふすま紙など内装材として。また、画仙紙やハガキなど書画用紙としても需要があります。
5種類それぞれに異なる味わいを持ちながら、杉皮という天然の木が醸し出すあたたかさは皆あわせ持つ。唯一無二の、能登仁行和紙の代表商品です。
能登仁行和紙
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