(つちいりし)
和紙の原料の中に土を混ぜて漉いたのが土入り紙です。
田んぼの土を入れたことが始まりで、赤土、黄土、珪藻土など
入れる土によって色や風合いが変わります。
土が入ったこの和紙も自然を抱いた能登仁行和紙らしい和紙です。
この土入り紙は現在代表である3代目・遠見和之(とおみ かずゆき)が考案し、つくりあげました。
工房のある三井(みい)町は「かやぶきの里」として知られるところです。古い建物が多く残る中で育った和之は、日本の伝統的な建築技法である土壁が好きで後世に残していきたいと考えていました。
それが原点となり生まれたのが土入り紙です。
土入り紙は楮の原料の中に土を混ぜこんで漉きます。
土の重さが加わる分、紙すきの道具が傷みやすく、また土の成分の関係からか
紙が漉きにくくなるという問題がありました。
土をどのような状態で入れるのか、どのくらいの量を入れるのか。
仕上がりを見ながら何度もくりかえし、「土壁の質感をもつ紙」という新しい和紙が誕生しました。
土入り紙は大きく分けて5種類あります。
白、アイボリー、グレー、ピンク、小豆色。それぞれに入っている土が違います。
白とアイボリーは黄土入り。同じ黄土でも採取する場所が違うと色が変わります。
グレーは珪藻土、ピンクは珪藻土を焼いたもの、小豆色は赤土が入っています。
どの土も近くで採れるもので、特に珪藻土は海に面した能登ではよく採れる土です。
地元の工芸である輪島塗の下地にも使われています。
一言で「土」と言ってもすべて異なるもので、自分が住むその土地の色がそのまま和紙になるというのは愛着がわくものです。
土壁のように土を感じられるものでありながら、難点であった土がはがれ落ちることがないという素晴らしさ。
土壁と和紙、双方の良さが合わさった画期的な和紙です。
壁や天井など内装用に、やや厚手につくっています。
シンプルでも自然のリズムを感じる、大地の和紙です。
能登仁行和紙
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